イノセント・ハンド
~控え室フロア~


『こ、ここだ!ここですよ。いや~警察官になって良かった。』

三人は、招待された有名人の控え室を順番に確認して回っていた。

『確か彼女は、イベントのテーマソングを歌うんだったわね。』

宮本がノックする。


『は~い。開いてるからどうぞ。』

中から透き通った綺麗な声。

『失礼しま~す。警備のものです。』

中へ入った。


『いらっしゃ~い。何か問題でも?』

彼女の美しい笑顔に硬直する宮本。

『ラ!ラブさん。初めまして、刑事の宮本淳一、25歳、刑事歴3年、独身です!!』

『ジュン!!私よりシッカリ自己紹介してるじゃないの!』

『アハハ。ご苦労様。例の犯行予告のせいね。』

『あら?ご存知なんですか?』

トーイ・ラブ。

歌手でありながら、エンターテイメント会社を経営し、国連や平和活動も活発に主導する世界的な『スーパーアイドル』である。

(関連小説『T・LOVE』)

総理の鷲崎を始め、政界にも幅広い顔を持つ。


『あそっか、世の中には内緒事でしたね。ごめんなさい。』

『ラブさんは、何も心配なさらなくて大丈夫です!この宮本25歳独身が、命に替えて守ります。拳銃の一つや二つ何でもありません!』(おいおい…)

あきれる咲。

『拳銃?爆弾ではないの?』

『あっ!しまった!』

焦る宮本。

『先日の爆発騒ぎの際に、拳銃が一丁盗まれました。』

『サヤ!それは秘密よ。』

『サキさん。この人は、大丈夫。我々側の人間です。』

紗夜に微笑むラブ。

(あなた…、人の心が?)

(はい。あなたも…ですね。)

この二人の会話は、他の者には聞こえないものであった。

その時、奥からヒールの高い音が現れた。

『さすが警察でございますわ。身内のご失態はお隠しにされるなんて。』

『ヴェロニカ、失礼ですよ。』

マネージャーのヴェロニカである。


『すいません。でも混乱を抑えるためで、けっして…』

あわてて咲が弁解をした。

『冗談でございますわ。失礼しました。』

『ヴェロニカ、あなたの丁寧な口調では、冗談にならないのよ。ハハ。』
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