イノセント・ハンド
~刑事課~

『課長、サヤの携帯は・・・ここに。』

咲が紗夜の携帯をかざす。

『ちっ!サキ、今夜のディナーの場所を突き止めてくれ。』

『分かったわ。』

と、その時。

『キャー!!誰か!誰か来てっ!!』

廊下に響き渡った。

富士本、宮本、白沢が走る。

取調室の隣室の前で、腰を抜かした婦警が倒れている。

『助けて!彼が!』

部屋へ入った3人は、信じられない光景を見た。

『なんだこれは、どうなっている。』

山岸の顔面は、マジックミラーの強化ガラスに打ち付けられ、何かに押さえつけられていた。

『おい!!』

富士本の合図で、白沢が廊下に出て、取調室のドアへ手をかける。

『だめです。開きません!』

『クソッ!』

『メキメキッ!』

山岸の頭蓋骨と強化ガラスが音を立て、潰れた顔面から血が滴り落ちる。

そして・・・彼の背後から、それがゆっくり顔を現した。

『ひっ!!』

宮本が思わず後ろに下がる。

血走った目。

逆立った髪。

凄まじいまでの恨みの念が、2人の体をも震わせる。


『じゃ・ま・す・る・な』

それが、力を増した。

『ガシャーンッ!!』

『うわっ!』

強化ガラスが割れ、山岸の体が隣室へ転がり込んだ。

『クソ!』

宮本が銃を抜き構える。

『よせ、ジュン。』

富士本が止める。



その頃、その音と叫びを聞きながらも、警視総監秘書へ電話をかけていた咲。

その電話に、それが聞こえた。


『じゃ・ま・す・る・な』

『キャッ!!』

身も凍る様な声に、思わず受話器を放り投げる咲。


『パンッ!!』

切り裂くような大きな音がして、全ての電気が消えた。
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