イノセント・ハンド
車に乗って40分程が過ぎた。

風井はまだ、華やかな街並みや風景の説明を続けている。

紗夜は、途中からサングラスを外していた。

そして、気付いていた。

彼女の研ぎ澄まされた聴覚や、見えない目にもわずかに届く光、そして信号の間隔。

それは、風間が話す風景とは違っていた。

車は東京湾に浮かぶ、古い工場跡地へと向かっていたのである。

そして、大きな古い建物の中へと入り、止まった。

その時。

ビクンッ!

紗夜の体が大きく揺れた。

自分の中に、何かを感じる紗夜。

そしてその感覚は、いつも自分に、強さを与えて来たのものであった。

少女が…戻った。



~刑事課~

停電はすでに復旧していた。

『いなく・・・なった?』

宮本がつぶやく。

『バカ、彼女の元へ帰ったってことだ。とにかく、警視の車を指名手配するんだ。』


『課長、警視総監秘書に聞いたんですが、今夜はディナーの予定はないと・・・』

咲の報告に宮本が反応する。

『ちょっと待ってくださいよ。彼らは紗夜のあの能力に気付いたんですよね。ということは、彼らはすごく不安になったはず。』

『しまった、サヤの身が危ない。彼らは、サヤを消すつもりだ!!』

『えぇ~!どっちが危険か分かんないけど、何か見つける方法はないの!?』

『あっ!』

宮本の頭に、モールでのシーンが思い出された。

『サヤさんは、GPS発信機を持っています。アメリカで使っていたとかで。』

『サキ、直ぐにアメリカへ電話して、サヤの居場所を探知させてくれ。宮本、行くぞ。』

『は、はい。』

二人は、署を飛び出して行った。
< 42 / 57 >

この作品をシェア

pagetop