イノセント・ハンド
『シャーッ!』

咲がカーテンを開ける。

『すっごーい!真っ白よ!!キレイ~。』

昨夜降り続いた雪は、全てを真っ白に包んでいた。

『さて!課長。後始末をしに、帰りますか。』

『サキ、お前は元気だな。仕方ない、そうするか。』

『じゃあ。サヤさん。俺たちは一旦これで。』

宮本が満面の笑顔で振り向く。

寝不足の顔に涙の跡が分かった。


『ばっかちん!。あんたはここで、サヤの看病よ。ねぇサヤ、聞いて。ジュンったら泣きながらあんたの手を、ず~っと握ってたんよ。見えないことをいいことに、キスでもしやしないかと、心配だったわよ。』

『サキさん!そんなことしませんっ!!』

『こいつ、ぜんぜん寝てないから、少しここで、休ませてやってくれ。』

『そんな!課長もサキさんも同じじゃないですか!!』

二人も廊下の長椅子で、ずっと意識が戻るのを待っていたのであった。

『みんな・・・』

そんな三人の姿が、光の戻った紗夜の瞳に映っていた。


『ありがとう。みんな。』

涙が次から次へとこぼれた。

『あったり前よね、課長。仲間なんだから!』

『おう。そうだとも。』

泣き顔のサヤの目を富士本が見つめる。

『サヤ、もう…終わったんだ。何もかもな。もう忘れるんだ。』

『………。』

無言でうなづく紗夜。

昨夜現れた姫城の笑顔がフラッシュバックする。

(…パパ。…もう…終わったわ…)

その瞳が、一瞬遠くを見た。

(長かった…)



『さてさて、サキ行くぞ。ジュン、後はよろしくな。』

そう言って、二人は出て行った。
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