イノセント・ハンド
~1ヶ月後~


『おはようございます。!』

始業間際の刑事課に、紗夜の声が響き渡った。

皆が一斉にドアの方を見る。

スティックも、サングラスも、黒い手袋もない彼女が立っていた。


『サヤ!』

サキが歓迎の声をあげる。

『紗夜、もう出て来たのか。ゆっくり静養してていいんだぞ。』

そう言う富士本も、心から待ち望んでいた朝であった。


『復帰、おめでとう!!サヤ。』

宮本が立ち上がり、大きな拍手を贈る。

課内が一斉に、温かな拍手に包まれた。


仲間たちの顔をしっかりと眺める紗夜。


『ありがとうございます。今日からまた、よろしくお願いします。』

深々と頭を下げた。


『なに水くさい挨拶やってんのよ、サヤ。ここは刑事課よ、そんなかしこまった世界が似合うメンバーは1人もいないんだから。さぁこっちへ来て。』


サキがウインクで、紗夜を手招きする。

クスっと微笑む紗夜。


『さぁ、みんな、仕事だ仕事!! ジュン、鑑識の豊川から、また何か届いてたぞ。』

『えっ、またですかぁ~。勘弁してよ。』

『ジュン、完璧に好かれちゃったわね。二股はいけませんよ~。』

咲が茶化す。

『二股なんてしません!!』

パラパラと冷やかしの拍手が鳴る。

微笑みながら、軽く会釈する紗夜。

『ほら、ジュン! さっさと行け。サキ、例の資料を持って、後で会議室へ来てくれ。紗夜も一緒に。』

『は~い。』

ウィンクする咲。

『それはいらん!』


いつもの刑事課の風景であった。


こうして、心理捜査官 紗夜は、職場へ復帰したのである。
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