たとえ9回生まれ変わっても
「蒼乃」
声が聞こえた。
すごく、懐かしい声を聞いたような気がした。
まるでずっと前から知っているような、ほっと安心するような声。
「紫央」
顔をあげると、目の前に紫央が立っていた。
優しい青い目で微笑んで、手を差し伸べてくれる。
「お母さんたちが心配するよ。帰ろう」
紫央が言った。
「うん」
わたしはその手をとる。
柔らかい、温かい手。
「わたしね、ずっと、探してるの」
帰り道、紫央と手を繋いで歩きながら、わたしは言った。
「うん」
紫央は言った。
何を、とは聞かなかった。
それきり、わたしたちは黙ったままだった。