たとえ9回生まれ変わっても
『出て行った猫が戻ってくることは二度とない』
おばあちゃんの呆れたような声が、言葉が、わたしの胸をえぐる。
わかっていても、期待してしまう。
シオはわたしにとってかけがえのない、唯一心を許せる友達だったから。
シオがいなくなって、わたしはまたひとりになった。
もう、二度と抱きしめることはできないんだ。
そのとき。
柔らかな風が、少し強くなった。
ーーリン。
耳の端っこで、かすかな鈴の音が鳴った。
「……え?」
わたしは驚いて顔をあげた。あたりを見回す。だけど、誰もいない。
「シオ……?」
わたしは立ち上がって茂みを覗き込んだ。やっぱり、何もいない。
でもーーさっきのは、シオの鈴の音だった。
鈴なんてみんな同じ音かもしれない。
でも、わたしは毎日、その音を聞いていた。
その音を求めて、毎日街のあちこちを探し回った。間違えるはずがなかった。
たしかに、シオの音だった。
シオ、近くにいるの……?
いるなら、出てきてよ。
どうしていなくなっちゃったの。
帰ってきてよ。
またたくさん遊ぼう。
一緒にご飯を食べよう。
ねえ、シオーー。
どれだけ探しても、シオはいなかった。
そんなのわかりきっていた。
いままでどれだけ探しても、どこにもいなかったんだから。
いまになってひょっこり現れるなんて、そんな都合のいいことあり得ないって。
バカだなあ、わたし。
幻聴まで聞こえるなんて。
しゃがみこんで、顔を埋めて泣いてしまいたくなる。
そのときーー。