たとえ9回生まれ変わっても


「森川さん、なんか元気ない?」

井上さんが心配そうに尋ねる。

「何かあったら聞くよ?」

吉田さんも優しい言葉をかけてくれる。

「……ううん。大丈夫。ありがとう」

大丈夫なんかじゃなかった。

ほんとうは不安でたまらない。
胸が張り裂けそうだ。

早く冬休みになってほしい。
いまだって、すぐにでも家に帰って、紫央がちゃんといるか確かめたい。

冬休みに入ったら、お店の手伝い、たくさんするから。
苦手な接客だって、なんだってするから。

だから、お願い。
紫央を連れて行かないで。

そんなのわたしのわがままだってわかっているけれど、願わずにいられない。

こんな気持ちになるなんておかしいって、自分でも思う。

誰かを好きになるって、失うのが怖くなることなんだ。

紫央が好きだと思えば思うほど、不安な気持ちが雪だるまみたいに大きく膨らんでいく。

自分では止められないくらい、どんどん大きくなっていく。




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