たとえ9回生まれ変わっても
◯
「おかえりー蒼乃っ!」
家に帰ると、玄関を開けたとたん、紫央が飛びついてきた。
「わっ!」
わたしはあわてて、もう少しで手に持っていた紙袋を落としそうだった。
「それ何?」
紫央がめざとく紙袋に気づく。
お店のロゴが入った茶色の紙袋。
クリスマス用にラッピングされた赤と緑の包みの中に、マフラーが入っている。
……しまった。
買ったのはいいけれど、渡すタイミングまで考えていなかった。
「えっと、これは……」
わたしは紙袋の紐を握りしめた。
渡すならいまじゃないかな。
はいクリスマスプレゼント、って。
だけどわたしは、紙袋をさっと背中に隠した。
「な、なんでもないよ」
「ふぅん?」
紫央はそれ以上聞いてこなかったので、ほっとする。
……いやいや、ほっとしてる場合じゃないでしょ、わたし。
プレゼントは渡さなければ意味がないんだから。
「そういえば、今日は早くあがったの?」
2階にあがってから、わたしはふと気になって尋ねた。
クリスマスはパーティーをする家が多いので、バケットなどがよく売れる。
お店はいまごろ大忙しなはずだけれど……。
それに、紫央が前に買ったよそ行きの服に着替えているのも気になった。
「うん。お母さんが、せっかくのクリスマスだから、蒼乃と2人でご飯食べていらっしゃいって」
「えっ」
「ついでに近くの洋食屋さんに挨拶してきてって、お小遣いももらっちゃった」
ほら、と紫央が嬉しそうに差し出す。
お母さん、また余計な計らいを……。
ちゃっかり者のお母さんのことだから、娘を使って馴染みの店に顔を利かせようという魂胆も、存分に含まれていそうだけれど。
思いもよらずに舞い込んできた予定に、わたしはどぎまぎしてしまう。