たとえ9回生まれ変わっても
◯
目が覚めて、わたしは体を起こした。
胸がざわざわとする。
なんだかすごく、嫌な感じ。
喉の渇きを覚えて部屋を出た。
冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ。
喉を潤しても、深呼吸をして少し落ち着いても、ざわざわとした嫌な感じはまだ消えない。
なんだろう、この感じ。
それに、またあの夢。
最近、あまりシオの夢を見ることがなくなっていたのに……。
時計を見ると、深夜の1時だった。
もうお父さんもお母さんも紫央も、みんな寝ている時間だ。
わたしも早く寝よう。
明日の朝、紫央と雪だるまを作るって約束したんだから。
きっとものすごく大きな雪だるまが作れるくらい、雪が積もっているはずだ。
だけどどうしても、そのまま部屋に戻る気になれなかった。
わたしのとなりの部屋、紫央の部屋へ、足音を立てないようにそっと歩み寄る。
……もうとっくに寝てるよね。
きっと布団にくるまって、すうすう寝息を立てているだろう。
そう思うのに、どうしてか、不安が消えない。
……寝ているのを確認するだけ。
ちゃんとそこにいるのを確かめたら、すぐにドアを閉めればいい。
紫央だって、しょっちゅうわたしの部屋に勝手に入ってくるし。
一度だけ。一瞬だけーー。
そっとドアを開ける。
真っ暗な部屋に足を踏み入れる。
静かだった。
怖いくらいに。
なんの音もしなかった。
「……紫央?」
電気を点けて、わたしは息を飲む。
そこに紫央はいなかった。
紫央が寝ているはずの布団が、折り畳まれて置いてあった。