たとえ9回生まれ変わっても




目が覚めて、わたしは体を起こした。

胸がざわざわとする。
なんだかすごく、嫌な感じ。

喉の渇きを覚えて部屋を出た。

冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ。

喉を潤しても、深呼吸をして少し落ち着いても、ざわざわとした嫌な感じはまだ消えない。

なんだろう、この感じ。
それに、またあの夢。

最近、あまりシオの夢を見ることがなくなっていたのに……。

時計を見ると、深夜の1時だった。
もうお父さんもお母さんも紫央も、みんな寝ている時間だ。

わたしも早く寝よう。
明日の朝、紫央と雪だるまを作るって約束したんだから。

きっとものすごく大きな雪だるまが作れるくらい、雪が積もっているはずだ。

だけどどうしても、そのまま部屋に戻る気になれなかった。

わたしのとなりの部屋、紫央の部屋へ、足音を立てないようにそっと歩み寄る。

……もうとっくに寝てるよね。

きっと布団にくるまって、すうすう寝息を立てているだろう。

そう思うのに、どうしてか、不安が消えない。

……寝ているのを確認するだけ。

ちゃんとそこにいるのを確かめたら、すぐにドアを閉めればいい。

紫央だって、しょっちゅうわたしの部屋に勝手に入ってくるし。

一度だけ。一瞬だけーー。

そっとドアを開ける。
真っ暗な部屋に足を踏み入れる。

静かだった。
怖いくらいに。
なんの音もしなかった。


「……紫央?」


電気を点けて、わたしは息を飲む。

そこに紫央はいなかった。

紫央が寝ているはずの布団が、折り畳まれて置いてあった。





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