たとえ9回生まれ変わっても


わたしはパジャマ姿のまま家を飛び出した。

外はいっそう雪が降っていて、風も強くなっている。

何も考えずに上着も着ないで、裸足で出てきてしまったから、寒いを通り越して、全身が痛いくらいだ。

こんな時間に家を出たりしたら、お母さんたちが起きてきたら心配する。

探し回って、もしかしたら騒ぎになるかもしれない。

だけど、頭の中がぐちゃぐちゃで、それ以上は考えられない。

紫央がいなくなった。

さっきまでとなりにいたのに。

おやすみって言ったのに。

明日の朝雪だるまを作ろうって、約束したのに。

布団がきれいに畳まれていた。
もうあの部屋に戻ることはない。
そう言っているみたいに。

わたしは走った。
あてもなく、雪の中をただ走った。

洋食屋はとっくに閉まっていて電気も消えている。

駅にも人はいなかった。
電車もバスも動いていない。
遠くには行っていないはずだ。

息が切れて、わたしは膝に手をついた。
いまにも倒れそうだ。

だけど、いま探さなかったら、見つけられなかったら、もう二度と紫央に会えない気がした。

見つけなきゃ。

もう、何も言えないままお別れなんて嫌だ。

あんなに辛い思いは、もうしたくない。






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