たとえ9回生まれ変わっても
◯
「お客さん、かわいいですーっ!」
おしゃれな服屋で、おしゃれな店員さんたちを虜にしているのは、もちろんわたしではなく紫央だった。
「これも着てみませんか?」
「これも!」
「これも着てくださいっ!」
服を買いに来たはずが、ほとんど着せ替え人形状態だ。
フリフリのレースのついたワンピースを強引に着せられた紫央は、なぜか本気にしている。
「えっ、ほんとに? これ似合う?」
「もう、すんごく似合ってますよう! 写真撮ってもいいですかっ!」
どうしよう。
店員さんがおかしくなっている。
マネキンさん、ぜんぶ丸裸になってるけど大丈夫ですか?
メンズとレディースどちらも揃っている店があったから入ってみたのだけれど、なぜこんなことに……。
たしかにものすごく似合ってはいるけれど。
「あっ、ごめんなさい。あんまりお客さんがかわいらしいのでつい、我を忘れて少し趣味に走ってしまいました」
少しではなかったと思うけれど。
店員さんは気を取り直して、わたしと紫央に似合いそうな服をいくつか持ってきてくれた。