たとえ9回生まれ変わっても




「お客さん、かわいいですーっ!」

おしゃれな服屋で、おしゃれな店員さんたちを虜にしているのは、もちろんわたしではなく紫央だった。

「これも着てみませんか?」

「これも!」

「これも着てくださいっ!」

服を買いに来たはずが、ほとんど着せ替え人形状態だ。

フリフリのレースのついたワンピースを強引に着せられた紫央は、なぜか本気にしている。

「えっ、ほんとに? これ似合う?」

「もう、すんごく似合ってますよう! 写真撮ってもいいですかっ!」

どうしよう。
店員さんがおかしくなっている。
マネキンさん、ぜんぶ丸裸になってるけど大丈夫ですか?

メンズとレディースどちらも揃っている店があったから入ってみたのだけれど、なぜこんなことに……。

たしかにものすごく似合ってはいるけれど。

「あっ、ごめんなさい。あんまりお客さんがかわいらしいのでつい、我を忘れて少し趣味に走ってしまいました」

少しではなかったと思うけれど。

店員さんは気を取り直して、わたしと紫央に似合いそうな服をいくつか持ってきてくれた。



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