たとえ9回生まれ変わっても


「蒼乃、すっごいかわいい!」

「そ、そうかな」

「とってもお似合いですよ」

店員さんが笑顔で言ってくれて、お世話だと分かっていても、嬉しかった。

「お2人は兄妹なんですかぁ?」

会話の中で、店員さんが尋ねた。

顔立ちは少しも似ていないけれど、瞳が同じ青色だから、兄妹みたいに見えるのだろう。

彼はうちの店でバイトをしている人で、なんて説明するのもどうかと答えに迷う。

紫央は前に、家族と言ってもらえて嬉しかったと言っていたし、そう答えてもいいのかもしれない。

「違います」

だけど紫央は、そう答えた。

わたしが驚いたのは、その口調が、やけに強く響いたから。

少しムキになっているようにも聞こえたのは、気のせいだろうか。

「あっ、そうなんですかぁ」

店員さんはあまり突っ込まないほうがいい雰囲気を察したのか、それ以上は何も訊いてこなかった。



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