たとえ9回生まれ変わっても
「こいつがあんまり紫央くんかわいいかわいいって言うから、どんな感じか気になっちゃってさ。でもほんとにかわいいっていうか、実際会ってみて納得したよ」
と祐希くんが笑いながら言う。
気になってついて来たって……。
鈍感なわたしでも、ピンときた。
それって、やきもちっていうんだろうか。
だとしたら、そんな必要はまったくないと思う。
紫央のことをかわいいっていうのは、あくまでも小動物的なかわいさであって、男の子としては見ていないだろうし。
「たしかにかわいいよな。男なのに、なんか頭撫でたくなるっていうか……」
と翔くんもうんうんとうなずく。
「えへ。よく言われる」
可愛らしく笑う紫央に、この場にいる全員がキュンと胸を掴まれた。
「ちょっと翔、なに赤くなってんの?」
「えっ、いや違う、断じて違うっ」
むっと頬を膨らませる吉田さんと、あわてる翔くん。
そんな2人を見て、みんながあははと笑った。
井上さんと吉田さん、それに祐希くんと翔くんは、中学からの付き合いで、高校が別々になってからもよくダブルデートをしているという。
他愛ないやりとりを聞いているだけで、仲のよさが伺える。距離が近くて、ちょっとしたことでも笑いあえる仲。
紫央はなんに対してもコロコロと笑うから、どんな場所でも、すぐに人と仲良くなれる。
初めて会った人でも、まるでずっと前からよく知っているみたいに。
すごいな、と思う。
わたしはそんな風にできない。
小さいころからずっと、わたしにとって唯一の友達は、シオだけだった。
でも、そのシオさえ離れていってしまった。
そしていまも、わたしはこの場にいるのに輪の外に立ってい疎外感を感じてしまう。
紫央と一緒なら大丈夫。
そう思ったけれど……。
家を出る前の心強さは、早くもしぼみかけていた。