たとえ9回生まれ変わっても




待ち合わせ場所の改札前には、井上さんと吉田がすでに待っていた。

「あっ、きたきた。おーい」

手を振る2人の横に、男の子が2人立っている。
帽子をかぶった背の高い男の子と、がっしりとした筋肉質な男の子。

「どーもー」

「はじめましてー」

男の子たちが爽やかな笑みを浮かべて言う。

「あ、あの……」

井上さんと吉田さんだけだと思っていたわたしは、露骨に戸惑ってしまう。

すごくナチュラルに挨拶されたけど……誰!?

「なんかごめんねー、急に彼氏連れてくることになっちゃって」

と井上さんが手をあわせる。

「祐希です。よろしくね」

すらりとした長身のイケメンが、にこやかに挨拶をする。

「俺、茜の彼氏の翔です。よろしくー」

もうひとりは、本当に高校生? と思いたくなるガタイのよさで、白い歯を見せてニカッと笑った。

「は、はあ……」

「あ、森川さんと紫央くんのことは一通り話してあるから大丈夫だよー」

井上さんの言葉に、わたしは「そうなんだ」と苦笑いを浮かべる。

……大丈夫っていったい、何が大丈夫なんだろうか。

さっそく不安でいっぱいになりつつも、空気を悪くしてはいけないと、口に出すのを躊躇ってしまう。

元々口下手なのに初対面の相手を前になんて、何を言えば正解なのかまったくわからない。

でも、さすが井上さんと吉田さんの彼氏というべきか、祐希くんと翔くんはおおらかで、わたしの様子なんてまったく気にしていなさそうだ。



< 68 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop