たとえ9回生まれ変わっても
◯
待ち合わせ場所の改札前には、井上さんと吉田がすでに待っていた。
「あっ、きたきた。おーい」
手を振る2人の横に、男の子が2人立っている。
帽子をかぶった背の高い男の子と、がっしりとした筋肉質な男の子。
「どーもー」
「はじめましてー」
男の子たちが爽やかな笑みを浮かべて言う。
「あ、あの……」
井上さんと吉田さんだけだと思っていたわたしは、露骨に戸惑ってしまう。
すごくナチュラルに挨拶されたけど……誰!?
「なんかごめんねー、急に彼氏連れてくることになっちゃって」
と井上さんが手をあわせる。
「祐希です。よろしくね」
すらりとした長身のイケメンが、にこやかに挨拶をする。
「俺、茜の彼氏の翔です。よろしくー」
もうひとりは、本当に高校生? と思いたくなるガタイのよさで、白い歯を見せてニカッと笑った。
「は、はあ……」
「あ、森川さんと紫央くんのことは一通り話してあるから大丈夫だよー」
井上さんの言葉に、わたしは「そうなんだ」と苦笑いを浮かべる。
……大丈夫っていったい、何が大丈夫なんだろうか。
さっそく不安でいっぱいになりつつも、空気を悪くしてはいけないと、口に出すのを躊躇ってしまう。
元々口下手なのに初対面の相手を前になんて、何を言えば正解なのかまったくわからない。
でも、さすが井上さんと吉田さんの彼氏というべきか、祐希くんと翔くんはおおらかで、わたしの様子なんてまったく気にしていなさそうだ。