日本から出られない!
やっと前くんの束縛から解放される、自由になれる、アメリカで何をしよう、わくわくしながらドアを開けたのだが、ドアの目の前にいた人物に私は固まった。

「そんな大荷物でどこに行くんだ?」

ニコニコと怖い笑みを浮かべた前くんが立っている。どうして?仕事に行ったんじゃ……。

肩に腕を回され、呆気なく家の中に戻される。後ろで鍵が閉められる音が聞こえ、緊張が胸に走った。

「な、何で……」

震える声で何とかそう言うと、前くんは「ずっと見てたから」と甘ったるいオーラを纏った笑顔で言う。

「馬鹿なお前は何も気付かない。スマホに盗聴アプリが仕込まれていて、この家に監視カメラが何台も仕掛けてあること……。必死に荷造りしているところ、可愛かったよ」

「何で、そんなこと……」

「桜に逃げられないようにするためだよ。桜は僕がいないと生きていけないし、僕もお前がいないと生きていけないんだから」

スルリと体のラインをなぞられて、抱き寄せられる。離れようとしても、前くんの腕から逃れられない。
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