オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜
 誉は、柚を送り響のマンションに戻って来た。エントランスでオートロックを解錠しようとした時だった。

「誉さん」と女性に呼ばれた。

「えっ?」

 驚きの声をあげ振り返る。驚くのも無理はないだろう。ここは、響のマンションであって、誉の家ではない。誉はまだ実家住まいなのだ。

「おかえりなさい」

「君は…」

「はい。高梨の娘です」

「なぜ君がここに?」

「それは…」

「俺をつけて来た?」

「…」

「何のようだ?」

「父からお話は…」

「教授から?何も聞いてないが?」

「父が誉さんのお父様にお話したはずですが…」

「?お見合いの相手は君か?お見合いの話は丁重にお断りした」

「そんな…私はずっと誉さんが…」

 その時、第三者の声が割って入った。

「ここで何してるんだ?」

「あっ、響。ちょうどいいところに。高梨さん。改めてお断りする。響行こう」

 呆然と立ち尽くす高梨を放置し、二人はエントランスを入った。





< 102 / 148 >

この作品をシェア

pagetop