レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



「私の他に、誰か来ましたか?」

「んー、志保ちゃん……だけだよ?あ、母さん来たかも」


仮面を貼り付けたように優しく微笑む彼は、冷たくて光の無い目をして遠いどこかに視線を向ける。



「そうですか」

「何で?」

「なんとなくです」

「そっか」


彼は呼吸をするよう、当たり前のように嘘をつく人だから。
それは私の為の優しい嘘なのか、誰かの為の残酷な嘘なのか。
心の内は分からない。



身に纏うスーツと息を乱した状態で、ベッドの上に2人転がって。この瞬間だけが成央さんと繋がれている気がする。

背中を向ける彼のシャツをぎゅっと掴んだところで──。




"ピーンポーン"



インターフォンの音が暗がりな部屋に鳴り響く。
どんどん、勢いよく叩かれる扉。連続して押されるチャイム。



「おーい、開ーけーて!」


こんな言葉、無視すればいいのに。



「いるんでしょー?早くーーー」






< 11 / 219 >

この作品をシェア

pagetop