レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「私の他に、誰か来ましたか?」
「んー、志保ちゃん……だけだよ?あ、母さん来たかも」
仮面を貼り付けたように優しく微笑む彼は、冷たくて光の無い目をして遠いどこかに視線を向ける。
「そうですか」
「何で?」
「なんとなくです」
「そっか」
彼は呼吸をするよう、当たり前のように嘘をつく人だから。
それは私の為の優しい嘘なのか、誰かの為の残酷な嘘なのか。
心の内は分からない。
身に纏うスーツと息を乱した状態で、ベッドの上に2人転がって。この瞬間だけが成央さんと繋がれている気がする。
背中を向ける彼のシャツをぎゅっと掴んだところで──。
"ピーンポーン"
インターフォンの音が暗がりな部屋に鳴り響く。
どんどん、勢いよく叩かれる扉。連続して押されるチャイム。
「おーい、開ーけーて!」
こんな言葉、無視すればいいのに。
「いるんでしょー?早くーーー」