レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「うわ、相変わらずきったな……。あれ、志保ちゃんも来てたんだ」
成央さんが扉を開ければ、予想通りの相手が学校の制服のまま立っていた。
太央だ。彼の十年の離れた弟。
左手首につけられた腕時計にチラリと目を向ければ、針はすでに23時を回っていて。
こんな時間まで遊び歩いていたのだろうか。
「連絡位くれればいいのに」
それなのに、成央さんは怒ることなく穏やかに対応する。
「あ、忘れ物!取り来ただけだから」
「母さんにちゃんと連絡入れたか?」
「えー、してなーい」
「この馬鹿、早くしろよ。……警察に連絡されるぞ」
「はーーい」
納得いかないまま2人のやり取りを黙ってみるしかなくて、私の方が部外者じゃないかと思えてきた。
「あの、成央さん。私帰りますね」
「え、あぁ。うん」
頬を膨らませた方が可愛い反応なのだろうか。でもそんなキャラじゃ無いからしょうがない。
「帰んの?じゃぁ、俺と帰ろ?兄さん酒飲んでるしさ」
「私は大丈…」
「太央、よろしくな」
"私は大丈夫。1人で帰れます"なんて台詞は、穏やかな笑顔を見せる成央さんによって最後まで言わせて貰えない。
ちらりと横に視線を向ければ、勝ち誇ったようにニヤリと口元をあげる太央がいた。