レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
ブーブーと振動音が辺りに鳴り響いた。
太央が制服のポケットからスマホを取り出して、画面に視線を落としながらも口を開き続ける。
「甘くて、薔薇の香り。うーん。どこかで嗅いだ事、あるんだよね」
「……」
「あっ、そうだ。高校の時に付き合ってた彼女と同じ匂いなんだ」
「……」
「でも。兄さんは志保ちゃんと結婚するんだから今さら無いよね!」
なんて、この子がにっこりと笑顔を向けるから腹わたが煮えくりかえりそうになる。
「私。やっぱり今日、成央さんちに泊まる。だから送らなくていい」
「戻るの?やめておいた方がいいよー」
足を止めてUターンをする私に嬉しそうについてくる太央。
歩いてきた道を引き返すだけなのに、胸がざわざわする。パンプスのヒールとアスファルトがぶつかる音が焦りを表しているようで、不安を掻き立てられる。
「兄さんのエッチって優しいのー?」
そんな下品な質問もちろん無視だけど。
全然、優しくしてもらったことなんてない。はじめてでも無理やりで乱暴で痛かった。
全然、愛なんて感じられないけど。でも、繋がってる時だけは──。