レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
部屋は真っ暗だった。
数十分前まで成央さんと体を重ねていた場所。
アパートの外からでも電気が消された状態なのだと分かる。
鞄からスマホを取り出して通話ボタンをタップする。何コール鳴っても出る気配すらない。
「俺、合カギ持ってるよ」
「貸して」
太央が小さな鍵を私の目の前に差し出すから手を伸ばしたのに、すぐ自身の手のひらにしまった。
「貸してくださいでしょ?」
「……は?」
「貸、し、て、く、だ、さ、い」
「……か、貸してくださいっ」
「はい、どうぞ。兄さん寝てるかもしれないから静かにねー」
本当にこの子は、私を嫌な気分にさせるのが得意なのだ。
でも確かに、仕事で疲れた成央さんを起こちゃいけないと思い、静かに鍵を回しゆっくりと扉を開ける。
「……え?」
外灯の明かりで目に飛び込んできたのは、女物の靴。
見たことのない小さなショートブーツが、成央さんの家の玄関に並んでいる。
「え、な、な……何この…ふがっ」
「静かにー」
後ろについてきた太央が右手で私の口を押さえて言葉を遮った。
この状況に思考がついていかなくて、頭が真っ白になるのに。
次の瞬間、耳に入ってきたのは私が望んでいたもの。欲しくて手に入れたくて、堪らなかったもの。