レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
太央に目を向けると、ちゃっかり旅館のであろう白生地に紺色のストライプが入った浴衣を着ていた。
「ね、これいーでしょ?そこの押し入れに入ってたんだ。志保ちゃんのもあるから着てー」
ヨロヨロと立ち上がり、押し入れの襖を開けて浴衣を取り出した。
「手伝う?手伝うー?」
「自分で着れます。着替えるからあっち行ってて」
「ちぇー、志保ちゃんのケチー」
太央を部屋から追い出してから、浴衣を身に纏ってみる。温泉に入る気力はないけど、こうやって浴衣姿になるだけで雰囲気が出て嬉しいな。
「うわー、志保ちゃん可愛い!似合ってるー。夕飯まで時間あるからお散歩しに行こー」
手首を掴まれて引っ張られる。すかさず、この子の骨ばった指が私の指の間に滑り込まれるから驚いた。
「……ちょ、ちょっと、離…」
「んー?」
この子がケロッと何でもない顔するから、動揺を悟られたくなくて手を引かれながらも足を踏み出した。
何年も婚約者として付き合っていたのに、男の人と手を繋いで歩く経験が無いなんて。今更ながら彼との関係がいかにも薄いものだったと思い知らされる。
それと同時に、手を繋ぐ事がこんなにも緊張するなんて初めて知った。