レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
温泉に入ったわけでもないのに顔が火照ったように熱くて、気付かれないよう足元のスリッパに顔を向ける。
旅館の中庭には、社会の教科書から出てくるような日本庭園が広がっていた。はしゃぐ太央に繋いだ手を引っ張られながらその中を歩く。
「あの男の子可愛い~」
「えー、彼女と一緒で嬉しそう」
他の宿泊客だろうか。そんな台詞がクスクスと笑い声と共に耳に入るから、なんだか急に恥ずかしくなった。
でも、手を離そうとしてもギュッと強く握られて振り払う事が出来ない。
「いーじゃん、今日だけだから。恋人ごっこしよーよ。ねー?」
「……っ、」
「志保ちゃん?」
「早く戻らなきゃ、夕飯の時間だわ」
時間は確実に過ぎて終わりは近づいている。
部屋に戻ると夕食の準備がされていた。
半分も食べられなかったけど、とても豪華なものだった。
「美味しかったー。お腹いっぱーい」
太央が満足そうに両手を伸ばして、畳の上に寝転がる。そんな無邪気な姿を見て罪悪感を抱かずにはいられない。
「そうね、最後の晩餐ってこんな感じなのかしら?」
「うん?なんか聞いたことあるー」
「……明日ね」
「明日だねー」
「太央、あなた本当にいいの?」