レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
振り向かなくても分かる、あの子だ。
隣を歩く成央さんの腕をぐっと握りしめて、仕方なく後ろに体を反転させとると──
「やっぱり、そうじゃん。何やってるのー?」
視界に入ったのは、太央と知らない女の人が立っていた。
え、太央の彼女?
私のこと"好きだ"とか言っていたから、彼女がいると思わなかった。いや、そこまで考えた事がなかった、というのが正直なところ。
「太央、お前こそ何やってんだよ?」
「うん、成績上がったからー。ご褒美デート中♡」
成央さんの低い声に、太央の無邪気な台詞が続けられる。
目の前の女の人に目を向ければ、にっこりと私に可愛らしい笑顔をみせるけど。違和感を覚える。
「志保ちゃん。彼女は太央の家庭教師をしてくれているんだ」
「……え」
「いつも、悪いな。太央が迷惑かけて」
血の気が一気に引いて、目の前の光景に愕然とした。
成央さんが彼女に向ける視線は、今まで見たことのないもの。
柔らかくて、優しくて、温かい。相手を愛おしく思ってるものと嫌でも伝わってくる。
「全然、迷惑なんかじゃないよ!太央くん凄い頑張ってるからね!」
「ねー」
「お前が言うなって」