レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



「はじめまして、太央くんの家庭教師をしている加賀奈都と申します」

「え……、」


突然、私にじっと向けられる視線。
明るくてハキハキと声を出す女の人は、大きな丸い瞳をしていてショートボブがよく似合っている。



「太央くんからお話伺ってます。お兄さんとご婚約されたとの事で、この度はおめでとうございます」

「……ありがとうございます」

「あ、私、成央くんと同級生で昔からお世話になってるんです!」


心臓がドクンっと凄い音を出して脈打ち出した。
ギラギラと真っ直ぐ向けられる強い目力に思わず顔を反らす。
成央さんを見上げても、慌て戸惑う様子もみられなくて、ただ、穏やかに彼女に目を落としている。


可愛らしい顔立ち。小さな鼻筋。
小柄で太央よりもずっと背が低くて、私より若くみえる学生のような容姿。


この人が、あの奈都?
あの夜の甘い声の持ち主なのだろうか。

何が現実なのか、夢なのか、頭の中がぐるぐるとまとまらないでいると。




「ねぇ、兄さん。立ち話もなんだからどっか入ろうよー」

「どうせ、お前は俺にたかるつもりだろ?」

「そんなことないよ。せっかくだから一緒にデートしようよー。ね?」


太央が"知りたいでしょ?"と小さく続けて、とても楽しそうに頬をゆるませた。

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