レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「もう。脱いだ上着くらい、かけておいてください」
「はは、ごめんごめん」
先週、帰ってきたばかりの筈の彼の部屋は、すでに散らかっており、生活感に溢れかえっていた。
だらしないと思う一面、子供みたいで愛おしさを感じてしまう。
きっと、結婚したら私が毎日この人の「しっかりしてください」なんて脱いだ洋服を片付けるのだろう。
なんて、未来を望むのが間違っていたのかもしれない。
太央はとりあえず大丈夫と言っていたけど、あの画像が流れたら一瞬で消えてしまう。
想像できる筈なのに、表面だけの仮面夫婦。そんなの偽物だと頭で理解しているなんて。
「でも、おばさまが元気そうで安心しました」
「あー、でも本当は1人じゃ不安みたいでさ。あの人、強がってる感じでさ。だから、嫌なことを考えないよう予定詰め込んでるんだよ」
おじさまの検査結果、良くなかったのだろうか。
「父さんのもとからの持病が悪化してさ、退院しても週に何回か透析する事になりそうなんだ」
「えっ」
「ほら強情で人の言うこと聞かない感じの人だから、全然病院に通ってなかったみたいで。症状があっても……」
成央さんの声は震えるように弱々しくて、私の肩に額をつけて顔を埋めた。
「志保ちゃんが羨ましいよ」