協道結婚
「美夜。こ、こんなんでいいのか?」

照れ臭そうにつぶやく組長さん。

「蔵ちゃん、上出来!最っ高〜❣️本当にヤクザなんだぁ」

本当にヤクザである。

「テメェら!百人集めろっつっただろうが!」

総勢32名の組には、無理なご注文であった。

「美夜さん、ありがとうございます」

「いいのいいの、教育担当だから」
…そこは関係ない。

「聞いてはいたけど、急なんだから静華ぁ」

朝、ハッピーベンツの横で立ち止まった時に、スマホ送信していたのである。

とりあえず、格闘物になることは回避できた。

「あ、あらぁ…もしかして、岩崎建設の…」

「はい。岩崎誠です」

やっと話に戻れた御曹司。
何気に名刺を差し出す。

「誠!ライバル会社に名刺出してどうすんのよ!」

それもそうである。

「ま・こ・と?(ニヤり)」
美夜が聞き逃すことはない。

(しまった!つい)

「いやね、あの…これには深い訳が…」

「深いんだぁ〜」上げ足を取る美夜。

「えっ!いえ、深くないない!浅いのよすっごく浅い。膝下…くらい…いやいや、足首くらいかな?ねぇ、誠?」 (あっ!ヤバっ)

そうゆー深度の話ではない。
振られた誠が困……

「ええ、普通の靴でも大丈夫なくらいです」

…ってないのかぁ〜⁉️

なんの話か分からなくなった美夜と組長さん。

「まっ、いっかぁ。無事で何より!口は固いから心配しないで。これでもうあいつらは大丈夫でしょ。さっ、行きましょうか蔵ちゃん」

「しゃ〜っ! 一同、解散❗️」

「お疲れ様でした❗️❗️」

見事な合唱。

走り去るベンツの群れを呆然と見送る。

「静華。さ、さっきの方はどちら様ですか?」

「何なに?興味でもあんの?」
(今日は一段と気合い入ったミニ。まさか…)

そこではない。

突然のヤクザ乱入。
六本木界隈で有名な蔵崎組の組長登場。
興味持つのが普通である。

とミニスカ美女。
そこですかぁ〜っ❗️

「うちの売り上げNo.1、鳳来美夜さんよ」

「何だか凄いねハッピー不動産」

実は誠はそれなりに調べてはいた。
ハッピー不動産の謎。
小さな会社がなぜ業界で5本の指に入るのか?

更にはヤクザ。
その組長をちゃん呼びする社員まで登場。
深まる謎に肝心なとこを忘れている誠。

「ありがとう静華。いつも嫌がらせをされて、作業が進まなくて困っていたんです」

「あんなの、お父上に頼めばよかろうに」
次は時代劇なのか?💦

「拙者、父上は苦手でござる」
付き合うな!誠!

(権力者家庭の親子によくある「確執」…ってやつかな)

「皆さん、もう安心していいと思います。これからもよろしくお願いします」

大企業の社長の息子とは思えない距離感。
彼の人気は男女問わず高かった。


再びハッピーベンツ。
例の物件へと戻る二人。

「そう言えば。静華って強いんだね」

やっと思い出した誠である。

「何か武術でもやってるのですか?」

静華としては、気付かれたくは無かった。
(そりゃ、そう来るわよね〜。仕方ない)

「子供の頃ね。お祭りに行くと、私は買い出し係やらされてたのよね。」

懐かしくもあり、腹立たしくもある記憶。

「タコ焼きとかとか、リンゴ飴とか好きそうだもんね、静華は」

そう来るか!

「た…確かに好きだけどね。違うの。私には何故か人の流れ…って言うか、動き…みたいなものがわかるんだよね。だから、人混みの中でも、誰にもぶつからずに自然に動けるの」

「だから、あの混み合った電車でも…」

出会った時から、不思議に思っていた。

「そう。血筋ってやつかな。ウチの家は、流水(るすい)流柔術の本家で、その素質を見抜かれて、中学まで無理矢理に父から教わってたの」

女の子として、柔術なんてやりたくもなく、わざと家から離れた高校に入り、それ以来実家を離れて生きてきた。

「それで、あんな技や動きができるんだね。凄くカッコイイとおもいますよ」

出会った時、盗撮魔容疑で簡単にねじ伏せられたことを思い出した。

「アハハっ。それほどでもないって」

(カッコイイ…か…🥲)

可愛い💕と言って欲しかった。
…無理です。残念💔
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