協道結婚
その日の午後。
「部長、行ってきます」
例の物件の契約である。
その真相を知るためにも。
今回は市からの契約であった。
電車を乗り継いで1時間半。
千葉県の某所に、そこはあった。
市役所に入る。
その入り口には大きな募金箱があり、かなりの額が集まっていた。
「お待たせしました。ハッピー不動産の方ですね。こちらへ」
直接市長室へ案内される。
「初めまして、市長の国光です」
「この度はご契約をありがとうございます。流水(るすい)と申します」
知らないことを祈った。
少し反応を伺う。(ほっ。よしよし)
早速、本題を切り出す。
「市長さん。あの場所のことはご存知でしょうか?」
市長の笑顔は変わらなかった。
「ええ。だからこそ買い受けるのです」
「でも…」
「実は…あの場所の歴史を調べたと言う若者が、このチラシを配ってましてね」
差し出されたチラシを見る。
そこには、私が調べた内容が、より詳しく記されていた。
そして最後に、あの場所に大きな神社を建築することへの協力と、承認を求める署名欄があった。
「私も最初は驚きました。怪しい場所とされていたあそこに、あんな悲話があったなんてね」
「その若者と言うのは、岩崎建設の?」
「いえ、特に社名などは名乗りませんでしたが…そう言われれば、苗字は岩崎さんでしたね」
誠に間違いはなかった。
あの夜の彼の目を思い浮かべた。
「でね。実はその話を、古くからこの地にお住まいの方の中には、親から聞かさていた方々もいて、またあの若者の話に、私ですら感動しまして。あっと言うまに大勢の署名と十分な寄付金が集まったのです」
入り口の募金箱を思い出した。
「では、あの場所に?」
「ええ。まずはあの神社に祀られていると言うお二人を供養し、新しい神社を建て、改めて祀り、願わくば恋愛成就の神社にしたいと考えております。実は…これは少々営業地味ていて恐縮ですが、この町には特に目立ったものがなく、一つの名所にでもなれば幸い、とも考えております」
「そうですか。実は私もあの場所を担当して、曰くの根源を調べたのです。そして、人を住まわせる場所ではないと諦めていました」
「おお、そうでしたか。では?」
「はい。私もそれを望んでいました。よろしくお願い致します」
こうして、商談は成立したのである。
誠が一軒一軒回って集めた署名。
彼の姿が目に浮かんだ。
「部長、行ってきます」
例の物件の契約である。
その真相を知るためにも。
今回は市からの契約であった。
電車を乗り継いで1時間半。
千葉県の某所に、そこはあった。
市役所に入る。
その入り口には大きな募金箱があり、かなりの額が集まっていた。
「お待たせしました。ハッピー不動産の方ですね。こちらへ」
直接市長室へ案内される。
「初めまして、市長の国光です」
「この度はご契約をありがとうございます。流水(るすい)と申します」
知らないことを祈った。
少し反応を伺う。(ほっ。よしよし)
早速、本題を切り出す。
「市長さん。あの場所のことはご存知でしょうか?」
市長の笑顔は変わらなかった。
「ええ。だからこそ買い受けるのです」
「でも…」
「実は…あの場所の歴史を調べたと言う若者が、このチラシを配ってましてね」
差し出されたチラシを見る。
そこには、私が調べた内容が、より詳しく記されていた。
そして最後に、あの場所に大きな神社を建築することへの協力と、承認を求める署名欄があった。
「私も最初は驚きました。怪しい場所とされていたあそこに、あんな悲話があったなんてね」
「その若者と言うのは、岩崎建設の?」
「いえ、特に社名などは名乗りませんでしたが…そう言われれば、苗字は岩崎さんでしたね」
誠に間違いはなかった。
あの夜の彼の目を思い浮かべた。
「でね。実はその話を、古くからこの地にお住まいの方の中には、親から聞かさていた方々もいて、またあの若者の話に、私ですら感動しまして。あっと言うまに大勢の署名と十分な寄付金が集まったのです」
入り口の募金箱を思い出した。
「では、あの場所に?」
「ええ。まずはあの神社に祀られていると言うお二人を供養し、新しい神社を建て、改めて祀り、願わくば恋愛成就の神社にしたいと考えております。実は…これは少々営業地味ていて恐縮ですが、この町には特に目立ったものがなく、一つの名所にでもなれば幸い、とも考えております」
「そうですか。実は私もあの場所を担当して、曰くの根源を調べたのです。そして、人を住まわせる場所ではないと諦めていました」
「おお、そうでしたか。では?」
「はい。私もそれを望んでいました。よろしくお願い致します」
こうして、商談は成立したのである。
誠が一軒一軒回って集めた署名。
彼の姿が目に浮かんだ。