協道結婚
駅の事務所へ着いた御一行様。

「あ、お茶、入れますね」

条件反射って言うものは恐ろしい。

「いやいや、こちらでやりますので、座っていてください」

慌てて、年配の警備員が若い方へ指示する。
恐らく、お茶など出す気はなかったのだろう。

「お、お茶🍵?…なんてありましたっけ?
あ、自販機でいいで…」

「それで、結構ですわ」

彼が言い終わるより先に口が出た。

(焦ってる、私。ヤバい。アレは見られたくないし…)

「で、何で彼が盗撮魔だと?」

今一番聞かれたくない質問。

「私から説明してもよろしいでしょうか?」

まるで困ってる私を見透かしたかの様に、イケメン盗撮魔が会話に入る。

「よ、よろしいかな?」

(なんで、私の許可が?!)

「い、いいわ。言い分を聞いてあげましょう」
(助かった〜。マジ助かったわ)

その間に、何とかアレを見せないで済む方法を考えなきゃ。と悪戦苦闘中の私。

「私は、こうゆう者です」

イケメン盗撮魔が名刺を渡す。

「おい、電話で確認しろ」
若い方へ指示する。

「正式に撮影許可も取ってあります」

彼が、首にかけた札を見せている。

(コッソリ消すか?でもどうやって?消したら証拠品無くなるし…)

脇の下から汗が伝うのがわかった。

(あっ、今朝はシュシュもしてないわ!いや、今はそんなことより…)

その時、電話を切った若い方が、年配に耳打ちした。

「な、なにっ!」

いきなり立ち上がる年配。

「ふ〜」息を吐くイケメン。

「こ、これは大変失礼しました。誠(まこと)様。もう結構です。貴重なお時間をすみませんでした。」

何やら、焦る私を差し置いて、解散しようとしているし。

「ちょ、ちょい待ち!まだなにも話してないじゃない」

「では、盗撮魔だと言う証拠でもあるんですか?お嬢さん。これ以上こじらせるなら、警察呼びますよ」

「け、警察…」(…はマズイ)

あの「美脚」が世間にさらされる悪魔的な情景が頭に浮かんだ。

「全く君は困ったもんだ。時々こうやって私を困らせるんですよ。迷惑かけてすみませんでした。」

イケメンが逃げ道を作った。

「いえいえ、こちらこそ失礼しました」

(なんで、謝るの年配?)

「さぁ、もう行くよ」

(えっ?えっ?え〜っ❓)

何だかわからないけど、とりあえず彼に連れられて事務所を後にする。

「さぁ、そろそろ携帯返して貰えるかな?」

差し出された手に、無意識に渡す私。
(「放心状態」って言うんだっけこれ…)

人は時々無駄に思いを馳せる生き物である。

「それより、君…普通のOLだったら、マズイんじゃない?」

彼がダイヤで装飾された腕時計を見せて言う。

(ロレックス…かなこれ?)
人は時々無駄に…

「9、9時過ぎてるやんけぇ〜!❗️」

東京生まれ、東京育ちの乙女である。
念のため。

「ヤバっ!って言うか、死んでまうわっ!」
…ね、念のため💦

「私は誠(まこと)、君は?」

普通、名前か?とは思いつつ、私も

「私は、静華(しずか)」と答えた。

とりあえず、携帯番号とLINEを交換して、話はまた今度ってことで、その場は過ごした。

彼は電車が発車するまでホームにいて、手を振った。

私も手を………!❣️

「しゃ、写真んんー!!」


これが、(まこと)との出逢いであった。
< 4 / 26 >

この作品をシェア

pagetop