協道結婚
夜の歌舞伎町。

高級クラブのドアの前に立つ膝上20の美脚。

「いらっしゃいませ、美夜様。お待ちしておりました。」

店員がドアを開き、一人が奥の席へ導く。

「今夜も美しいねぇ、美夜さん。」

蔵崎組組長 蔵崎 満。

「おら、どけ!」
隣の女性を退ける。

そこへ躊躇なく座る美夜。

「まだ店を広げたいとか?相変わらず欲の尽きないお方だこと」

「美夜様、どうぞ」

子分がロックを差し出す。

「欲が尽きた時は、引退よぉ。で、あっちの買収は、どんなあんばいだ?」

「買収に、3億。ウチの仲介料はいつも通り30%の9000万。」

ロックを口に、淡々と告げる美夜。

「またまた、ちぃと高くねぇか?もう少しまけろや」

蔵崎の手が美夜の太ももに伸びる。

「ストップ!そ・こ・ま・で」

いつの間にかアイスピックが、蔵崎の喉に触れている。

子分達が胸に手を入れる瞬間、

「やめろ!」蔵崎が止める。

蔵崎が手を離すと同時に、アイスピックをサーバに戻す美夜。

「埠頭の27番倉庫付きよ。高い買い物ではないと思いますけど?」

「中身を知ってんのか?」

蔵崎が目を細める。

「私は知らない、って言うか知りたくもないけど、姉がめんどくさがってたわ」

鳳来 美夜。

双子の姉、鳳来 咲 は、警察上層部にも通じている敏腕刑事であった。

暫しの沈黙。

美夜が携帯を出し、あらかじめ入力しておいたメールを送る素振りを見せる。

「ガッはっ!参りましたよ、いつもいつも。」

すっかり笑顔の蔵崎。

「全く、冗談通じねぇなぁ美夜には。」

「いい加減、猿芝居は辞めませんか?蔵ちゃん。他の皆はマジになってたわよ」

「それがおも知れぇから、辞めらんないのさ」

崩れおちる子分達を見て笑う蔵崎。

「心配すんな、あそこにはヤバいものは入っちゃいないよ」

「当たり前でしょ。薬や武器なんかなら、咲が見逃すわけないし。」

「そりゃそうだ。よし、まいどサンキューベリマッチョ!さて、飲むかぁ」


これが、美夜のいつもの仕事であった。
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