総長、私のリボンほどいて。🎀

 呼びかけると、居間にいる月沢(つきさわ)くんが振り返った。

「…ありす」

「なんで…いるの?」
「なんで…黒有栖(くろありす)の特攻服着てるの?」

「…忘れ物したから一旦戻って来たわ」
「…特攻服はここで別れた時に氷雅(ひょうが)に貰ってお前に最後に見せたくて」

「そう、なんだ…忘れ物って?」

「…お前」

 私はドキッとする。

「え……」

「…なんてな」
「…氷雅(ひょうが)に頼まれた。ありすとちゃんと話つけろって」
「…総長の命令、聞かない訳にはいかねぇよな」

 私は両手で顔を隠して泣く。

 “俺の好きにした”って…。
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃん…こういうことだったの?

 “私のこともう、好きにして”

 あんな期待持たせるようなひどいこと言ったのに――――。

 月沢(つきさわ)くんは玄関まで歩いてきて、私の両手を下に降ろす。

「…氷雅(ひょうが)からはもう、ぜんぶ聞いてるよな?」
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