【短】邪魔な境界線
「カナ?」
「え?ああ、……彼氏欲しいかって話だっけ? 今はいいかなー。いや彼氏くらい1人や2人欲しいけどネ? 高校生だし恋愛したいですよそりゃあ。でもほら、あまり向いてなさそうじゃん?私って」
大して可愛くも綺麗でもないし。賑わいあるグループにはいるけれど、写真を撮るにしても何するにしても端だったり撮らされる側だったり。そんな半端な立場の私を好きになる人なんているのかすら危うい。
そんな私が王子様扱いされてる親友に好かれるなんてこともあるはずがないんだよ。
ああ、ほんと私の方が可哀想なんだけどな。なんで失恋話聞かされたりしないといけないんだ。はあ。
「恋愛に向き不向きなんてあんの?」
「え?」
「そんなん気にしてたら恋愛なんてできっこないって。何をそんなに気にしてるんだよ。カナは十分魅力的じゃん。聞き上手で話し上手だし、ノリも上手いし、頼られるし、可愛いし」
「えっ?」
「え? 俺なんか変なこと言った?」
「ううん。いや……でも、今、か、『可愛い』って……」
可愛いって言われた。これは聞き間違いじゃない? え?
彼の口からこんな嬉し発言が聞けるとは思わなかった。正直今にでも舞い上がってしまいそうなくらい嬉しい。どうしよう。顔がにやけちゃう。
「なに、そんなに嬉しかった?」
「いや、まあ、うん。そんなとこ」
「ははっ、『そんなとこ』って。ははっ」
「ンなッ、なんで笑ってんのよっ、いいじゃん言われ慣れてないんだからっ」
ましてや、好きな人に言われるなんてそんな事があるなんて思わなかったんだから。嬉しすぎるに決まってんじゃん。
「ふぅん」
ドキリとしたのは彼が今までカノジョに向けるような瞳で見据えていたから。
は、何よ。頬杖なんかついちゃってさ。
……こんな顔で元カノ達を見つめていたのだと思うと喉が焼けそうなくらい苦しくなる。いいな。羨ましい。私だってアンタのカノジョになりたいのに。
私だったら彼の好意をちゃんと受け止めるし、同じくらいの量を倍にして返してあげるのに。
私だって彼を独占したい。
そんな大きな夢は叶いっこないんだろうけど。