一途なイケメンくんととろけるくらいに甘いキスを



騒ぎを察して、いつの間にか店長が来てくれていたらしい。



店長に注意されたのか、さっきの2人組は姿を消していた。



「うん、なんとか」


「嘘つくなよ」



そう言われて、まだ手の震えが治まっていないことに気がつく。


琥珀くんは私のことをよく見てくれている。


自分でも気づいていないことを琥珀くんは気づいてくれる。


家族や友香ちゃん以外に唯一私のことをわかってくれる人。



「……怖かった」



そう思うと、ポロリと本音が口から飛び出てきた。



「すっごく怖かった」



私がそう呟くと、人目もはばからず私の背中に手を回し、抱きしめられた。


反対側の手は頭の上に置かれ、優しく撫でられる。


まるで子どもをあやすかのような優しさ。


そんな優しさに思わず涙がこぼれ落ちそうになった。


今はバイト中だということを思い出して、涙は奥へと引っ込めた。




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