一途なイケメンくんととろけるくらいに甘いキスを
「寝ちゃってる……かな」
「……違う」
「……へ?」
ポソッと漏れた声に、天地くんが反応した。
天地ちゃんくん、起きてたんだ。
声のトーンから不機嫌そうなのが伝わってくる。
「じゃ、じゃあ丸つけするために交換して欲しいんだけど……」
ドキドキしながらも、なんとか声を絞り出した。
言いたいこと、ちゃんと言えた。
安心してホッと胸を撫で下ろしたけれど、一向に天地くんはプリントを差し出してはくれない。
「……天地くん?」
「違う。天地じゃなくて琥珀だ」
「……っ、」
まさか不機嫌な理由がそういう意味だとは思わなくて。
「こ、琥珀くん……プリントの交換を……」
緊張なのか、恥ずかしさなのか、不安からなのか。
わからないけれどいつもよりも声が震える。
「ん」
「あ、ありがと」
納得したのか、琥珀くんと呼ぶとすんなりプリントを交換してくれた。
おかげで採点ができた。
ただし、この日以来、滅多に私から声をかけることはなかったけれど、呼ぶ時は“天地くん”じゃなくて“琥珀くん”と呼ばないと返事をしてくれなくなった。