高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


「考え方の違いがあるのはわかる。それでも、私には付き合ってもいない男女がふたりで頻繁に会うっていうのは信じられなかったの。とくに高坂さんは真面目な子だし、私と考え方が似ていると思っていたから余計に。だから……もしかしたら私の気持ちに気付いていて、気を遣っているのかもしれないって考えたらしっくりきた」

たしかに、水出さんと私は仕事に関する考え方だとか、モラルだとか、根っこの部分が似ていた。

そういう事情もあり部署内でも仲がよかったのだ。社内で起こる些細な問題や変化に対する意見はいつも似ていたし、共感できた。

だから恋愛の面でも、私は真面目なのだろうと考えた水出さんのことは納得できた。

もともとは私だって気軽に異性とふたりきりにはならない。ただ、後藤がイレギュラーなだけだ。

「付き合ってるって、ハッキリ言ってくれたら私も諦めがつくのにって、勝手に苛立ってもいた。でも本当に違ったんだって、今の話を聞いて驚いたし……すごく反省してる」

目を合わせた水出さんに「勘違いして嫌な態度をとってごめんなさい」とハッキリ謝られ、慌てて首を振った。


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