高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


「あの、上条さんは割とこういうことが多いんですか?」
「一夜の恋という意味で聞いているなら、そうですね。社長も懲りたのか、ここ一、二年はなかったので今回が久しぶりではありますが、昔はそれなりに多かったです。あの見た目で地位も収入もあるとすぐに女が寄ってくるんですよ。その中から後腐れなさそうなのを選んで適当に遊んでいた時期はありました」
「……そうですか」

私の声のトーンが下がったからか、緑川さんが片眉を上げる。

「もしかして、自分が特別だとでも思いましたか? だとしたら痛い勘違いです。そもそも出逢ったその日にこんな関係になるような女性に本気になるわけがない。社長だって浅はかな女ぐらいにしか思っていないか、気にも留めていないかのどちらかですよ」

私が傷つくことなんてお構いなしにずけずけと言ってくる緑川さんに、シーツを握る手に力を込める。

ここまで言われて悔しかった。でも……きっとその通りだから何も言い返せない。

私がストーカー化しないようにと危惧してここまで完膚なきまでに打ちのめしているのかもしれない。

でも、それにしたって言いすぎだ。
上条さんよりも緑川さんが背後に気を付けるべきだと思う。

もちろん、向けられるのは好意じゃなく殺意という意味で。

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