高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


相手は社会人になってからできた恋人だったのだけれど、何度かチャレンジしてみても無理で、結局ギクシャクして終わってしまった。
それ以降、恋人はおろか好きな人もできずに今日まできている。

処女ではないし、それまでは普通にできていたことを考えると、思い当たるのは大学時代の一件で、それ以降、誰ともそういう関係にはなれていない。

いくら恋愛に積極的な私だって、ベッドの上であんな気まずい空気を何度も味わえば、腰だって重くなるし弱気にもなる。

もしかしてもう誰とも触れ合えないんじゃないかとも考えていたところだったので、今回の上条さんとの一件は私にとってはだいぶ大きな一歩だし、克服できたという自信にもなっていた。

だって、触れられても嫌じゃないどころか自分から手を伸ばせたのだから。

「そのトラウマになった事件が起きたのが四年前くらいだっけ?」
「うん。大学三年の頃だからだいたいそう」

今回、上条さんと普通に最後までできたことを考えれば、社会人一年目にできた恋人とうまくいかなかったのは、単純に時間薬が効いていなかったせいだろうと納得する。

あの件から五年が経ち、私の気持ちも癒えてきてようやく普通に恋愛ができるようになったということだ。

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