高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―
緑川さんの話によれば、数年前までは遊んでいたらしいし事実なんだろう。
上条さんのスペックで遊んでいなかった方が不思議と言えばそうなのだろうけれど、そこをわかっていてもやっぱり少し気持ちが重たくなる。
でも、そんな感情すらどこか嬉しく思うのは、恋が久しぶりだからだろう。
一歩踏み出せたことにもだけれど、上条さんに自然と浮かれた音を弾き出した胸が嬉しくて仕方ない。
「まぁ、一回しただけなら普通ならスルー案件だけど……高坂にとっては簡単にはいかないよな」
カウンターに頬杖をついた後藤が意味深な笑みを向けてくるので、気恥ずかしさを感じながらも素直にうなずく。
「うん。ちゃんと最後までできてだいぶホッとした。だから、アルコールが背中を押した部分はあるにしても、後悔はしてない」
ハッキリと答えた私に、後藤が目を細める。まるで子ども相手にするような顔だ。
「そうだよなぁ。高坂はそこ結構悩んでたもんな」
私が、恋人ができても体に触れられると拒否反応を起こすようになったのは、過去の恋愛で一度失敗してからだ。
もともとは恋愛に積極的で、好きになると自分から動くタイプだ。それなのに、いざ……という雰囲気になると急に怖くなり固まる体に気付いたのは、二年前。