石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~
「ごめんなさい、こんな話をして。早く花を積んで帰らなくては。メルリアに怒られてしまうわ」
スノードロップでもあればいいんだけれどもと、ルルティアナは呟きながらあたりを見回す。
するとどういうことだろう。さっきまでは何もなかったはずの足元に、すっと伸びたスノードロップの新芽が見えた。
花蕾はふっくらと膨らんでおり、屋敷に持ち帰って温めれば明日にでも咲いてくれるかもしれない。
「ああ! トレシー様のおかげね! ありがとうございます!」
ルルティアナは嬉々としてそれを積んで花かごに入れると、石像に向かって何度も頭を下げた。
「またお礼に来ます。次はあなたを磨くための布を持って来なくっちゃ」
微笑ながらもう一度石像の頬を撫でると、ルルティアナは足取りも軽く屋敷へと戻ったのだった。
以来、ルルティアナは山に使いに出されるために石像の元を訪れた。
約束した通り、話をする前には石像についた汚れを丁寧に拭い、かいがいしく世話を焼いた。
まるで行き場のない愛を注ぐように、記憶にある優しい母親を自分でまねるように、石像の汚れを取り、磨き上げる。
見つけた時は苔だらけだったそれはルルティアナの献身により、町の中心に飾られているものよりも美しく神々しくさえあった。