石像は凍える乙女を離さない~石にされた英雄は不遇な令嬢に愛を囁く~



「トレシー様、今年の秋は山の実りがよく、色々と蓄える事が出来ました。これで冬場に食事を抜かれても安心だわ」



 そう微笑むルルティアナは少女から女性になっていた。来月には十九歳になる。もうここに通い詰めて十年が過ぎようとしていた。

 以前はろくな食事を与えられていなかった故、やせ細った身体をしていた彼女だったが、不思議とこの石像を訪ねた帰りは古い罠にかかった獣や、山の実りに出くわす事が多く、家族にばれないように栄養を蓄える事ができた。

 そのおかげが、華奢く細い体つきではあるものの健康を損なうことなく成長する事が出来たのだ。



 石像の足元に腰掛け、その足にもたれかかりながら日々の苦労や何気ない出来事を話すのが癒しの時間であった。

 返事が返ってくることはなかったが、英雄は黙って話を聞いてくれるような気がしていたから。

 春夏秋冬と季節ごとに変わる景色の中、石像だけがルルティアナの支えだった。

 ずっとこの日々が続けばいいのとルルティアナは願っていた。

 だが、その願いははかなく消えてしまった。



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