私の愛は···幻

🎹アルフレッド・ブレンデル②


俺は、しばらく
  アメリカに滞在する。
そのために調整を続けてきた。

天音のおばあさまから連絡があり
『アルフレッド。
部屋は、沢山あるから
ここに滞在しなさい。』
と、言ってくれたから
『おばあさま、ありがとうございます。』
と、言い
『明日、アメリカに入ります。』
と、言うと
『楽しみにしてるわ。
   気をつけて来なさい。』
と、言って貰えた。

明日、天音も退院して
おばあさまの家へと戻ってくる。


真っ白な顔で
眠っている?天音······

その姿を見て
ドアから離れる事が出来ずにいた。

あの····可愛くキラキラした笑顔の
天音は·····いな····い······

どうして·····
なぜ·······
それ·····ばかり······

そんな俺の肩を温斗が
“ ポン ”とたたく。

流れる涙を拭きながら
こいつは、もっと辛かったはずだ
一緒に入れなかった俺が、
泣いて良いわけないと
自分に言い聞かせ
『ごめん。』
と、言う俺に温斗は首を横に振り
『長丁場になるかもしれない。
最善をつくすだけだ。』
『ああ。俺には、ピアノしかない
心をこめて弾くよ。』
と、伝えると
温斗は、
『ああ、頼む。
天音の憧れのピアニストなんだ。
お前は。』
と、言われて
そんなたいしたものではないが
やる、やってやる。

おばあさまの計らいで
天音が寝ているは
ピアノのある部屋だ。
今、天音は、窓辺のベッドの上で
目を閉じている。
左腕には、栄養補給の点滴
鼻には、酸素吸入がされている。

俺は······
『天音、お帰り。
俺には、ピアノしかない。
天音のためだけに弾くから
聞いて欲しい。』
と、天音の手を両手で握りしめ
おでこにつけて祈る·····


『では、天音、弾くよ。』
と、言って椅子に腰掛け
ピアノを奏でる。

一曲目は、天音とピアノ教室で
初めて弾いた曲にした。

心を込めて
天音に届くように······

一心に弾く

弾き終わり天音を見ると
天音の目から涙が流れていた
『あまね!天音!!』
と、叫ぶ俺に

温斗やおばあさま
寺田さん夫妻もかけつけて
『天音、聞こえたんだね。
  アルフレッドのピアノだよ。』
と、天音の頭を撫でながら話す
おばあさまに
寺田さん夫妻も何度も頷いていた。

ピアノを弾く時間タイミングは、
俺の好きな用に言われていた。

どうしても外せない仕事もあるから
皆で話し合って決めて行く。

天音が意識を失って二週間目の
出来事だった。
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