私の愛は···幻

🎹意識を失い····諦め


天音が意識を失った日から
一年半が過ぎ二年になろうとしていた。

周りから諦めの気配も感じる

だが、俺と温斗、おばあさまや
寺田さん夫妻は、諦めなかった。
いや、諦めきれなかった。

俺は、演奏を控えていたから
引退説や
スランプ説
雲隠れ説まで、浮上して
両親に取材が
殺到して迷惑を
かけることもあった。

もちろん、両親にはきちんと
謝罪をしていたし
どんなに俺が
天音を想って生きて来たのかを知り
全面的に協力をしてくれた。

いつも不在で親らしい事を
何もしてやれなかったから·····と。

俺自身、両親が世界中で
演奏をしていることに
尊敬や自慢があったから
なんとも思っていなかった。

それに、俺には
天音と温斗がいてくれたから。
天音の両親も温斗の両親も
俺を可愛がってくれていた。

だから、両親とどうしても
海外に行かないと行けなくなった時
行きたくないと何度も訴えた。

そんな俺を説得してくれたのが
天音と温斗だった。
『私は、アルのピアノが大好きで
アルをとても尊敬しているし
アルは、私の見本なの。
そんなアルのピアノを世界中の人に
きかせてあげたい。
だから、おじ様達と一緒に行って。
だけど、温斗と私の事は
忘れないで。』
と、言ってくれた天音。

俺の気持ちを伝える事は
なかったが
絶対に告白して
天音と結婚すると決めていた
のに·······

こんな思いをさせるなら
打ち砕かれても
告白をして、無理矢理でも
結婚すれば良かった。
と、天音の手を握り締めていると·······
< 34 / 65 >

この作品をシェア

pagetop