エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
優杏は就職してから忙しくて、この1年ほどは東京に帰ってこられなかった。
両親と兄が実家に住んでいたのだが、半年前に兄だけが消えてしまった。
兄の悠慎は子どもの頃から優秀で、農業工学が専門だ。
大学卒業後は院に進み、勉強の傍らボランティア活動を良くしていた。
中でも海外へ出かけることが多く、アジアの各地や遠くアフリカ奥地へも自ら志願して行くような人物だった。
大手企業に就職してからもボランティア活動をやめることはなかった。
水を汲み上げる装置や灌漑設備を作るのが得意だったので、現地ではとても重宝されていたらしい。
貴重な水を少しでも多くの人にと、精一杯がんばっていたのだろう。
その悠慎が、ケニアで交通事故に遭い急死した。去年の秋のことだ。