離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
3.ふたり旅



高校二年のとき、瑛理とものすごく接近してしまったことがある。
用事があって瑛理の家にお邪魔していたときだ。

当時、私と瑛理は完全にただの友人関係だった。私はそれでいいと思っていたし、瑛理を婚約者だと意識することもなかった。
本音を言えば、意識すると苦しかった。
瑛理は目立つ容姿と、学年一の頭を持っていて、彼の周りには派手なタイプの男子や女子がたくさんいた。男子とばかりつるんでいるようだったけれど、女子の何人かは瑛理を狙っていたし、実際告白した子もいたと思う。
瑛理が女子と付き合っているのを中高では見たことないけれど、大学時代はきっと彼女もいただろう。ともかく、高校二年当時ですら華やかだった瑛理の交友関係に嫉妬したくなかった。
飽くまで私は幼馴染。瑛理とは親の決めた相手だけど、お互いに興味はない。
そういうスタンスを貫いていた。

だから、瑛理にベッドに押し倒された時は驚き過ぎて頭が真っ白になってしまった。
それと同時に押し込めていた気持ちが溢れかけた。
瑛理は私に対して、興味があるのだ。それなら、私たちは婚約者同士として……ううん、恋人として近づけるかも。

しかし、私の期待はすぐに打ち砕かれた。

『俺たちどうせ結婚するんだよな。それなら、少しだけ先に進んでおこうぜ』

それはあまりに軽い言葉だった。
選べないから仕方ない。だから、相手をしろ。
そう聞こえた。
瑛理は私を好きじゃない。でも男だからそういうことに興味がある。
他の女子を選ぶと親たちがうるさい。
そんな理由。
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