離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
ショックで顔面蒼白だっただろう私を見下ろして、瑛理はその気がなくなったようだ。

『なんちゃって。本気にした?』

瑛理がなかったことにしようとしているのがわかった。こいつは駄目だと思ったのかもしれない。せめて気まずくないようにという間の抜けた気遣いに、私はのった。怒って見せ、謝る瑛理に文句を言った。

それでこの思い出はおしまい。
私は余計に瑛理との将来に希望を見いだせなくなった。

瑛理はどうやっても古賀柊子を恋愛対象に見ないだろう。抱けるか試してみて、駄目だと気づいた。そんなところだろう。
その証拠に、瑛理はそれからただの一度も私に恋人として接することはなかった。
私への扱いは同性の友人に近い。私もその方が居心地がよく、また自然な気持ちで瑛理の傍にいられるから都合がよかった。友情なら私たちは一緒にいられるのだ。

だけど、思う。
未練がましく結婚する前に、私は瑛理と決別すべきだったのだ。その結果、親の不況を買っても仕方ない。
それなのに、瑛理への気持ちを殺しきれないばっかりに、私はどんどん面倒な方向へ転がってしまう。


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