OL 万千湖さんのささやかなる野望
「冬の野外イベントとか。
 お客様も凍死しそうになってますが。

 ミニスカは地獄です。

 ニーハイソックスやブーツを履いてはいるのですが、あのわずかな隙間こそ、冷えるとお腹が痛くなるポイントなんですよね」

 わかるわかる、と女子たちは頷いてくれた。

「でも、万千湖が元アイドルとはね~。
 なんか変わった子だな、とは思ってたんだけどね」
と腐の世界にお住まいの安江が言う。

 黒岩が聞いていたら、
「いや、そいつが変わってるのは、芸能界のせいじゃなくて、元からだが……」
と言っていただろうが。

「でも、いいなあ、アイドルかあ。
 やっぱり憧れるわよね。
 可愛い衣装着て、みんなの前で歌って、手を振って」
と言う安江に瑠美が言った。

「あら、可愛い衣装着て歌って、手を振るだけなら、いまどき簡単じゃん。
 やりなさいよ。
 カラオケでステージつきのパーティルーム、借りてあげるから」

「見てますよ、安江さん」
と鈴加が微笑み、

「私も見てますよ、安江さん」
と万千湖も微笑む。

「えっ?
 嫌よ、恥ずかしいっ」
と言う安江に、雁夜が、

「大丈夫」
となにが大丈夫なのか言った。

「きっと盛り上がるよ。
 駿佑がマラカス振ったり、タンバリン振ったり、太鼓叩いたりしてくれるから」

 いや、やるの、俺ひとりかっ、という顔で駿佑が振り返っていた。




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