OL 万千湖さんのささやかなる野望
 こいつはたぶん、ラーメン屋の冷水機か回転寿司のお湯がでる蛇口を買ってやった方が喜ぶんだと思うが。

 それはそれとして、指輪は買わねば。

 そう思った駿佑は、昼休みの終わり、万千湖に、
「今日の夜、空いてるか?」
と訊いてみた。

「指輪を買いに行こう」

「あー、美雪さんの手前、買わないわけにはいかなさそうですもんね。
 あっ、じゃあ、私が買いますよ。

 それで買ったってことで」

「お前、今、金ないだろうが」

「ちょこっとした指輪を買いますよ。
 私がこれがいいって言ったと美雪さんには伝えてください。

 自分で払うので、指輪の代金分は課長がとって。
 残りを美雪さんにお返しされてはどうですか?」

「いや、あの金は全額母親に返す。
 お前の指輪は俺が買うから」

「……何故ですか?」

 じゃあ、買わなくていいじゃないですかと言う顔で万千湖が見上げてくる。
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