OL 万千湖さんのささやかなる野望
 


 ……困ったな、と万千湖は思っていた。

 課長に指輪を買ってもらう理由もないんだが。

 何故、こんなことに……。

 仕事が終わって駿佑と待ち合わせた万千湖は、前からちょっと可愛いなと思っていたブランドの店に行った。

「あ、じゃあ、これで」

 万千湖はなんの石もついていない可愛い細工の指輪を指差したが、

「もっと高いのにしろ、俺が怒られる」
と駿佑は言う。

「あ、じゃあ、これで」

 万千湖は今度は小さな石のついた、シンプルな指輪を指さした。

「もっと高いのにしろ、綿貫が現れる」

 えっ? 綿貫さんが何処からっ?
と万千湖が店内を見回している間に、駿佑はさらに高い指輪がある方に行ってしまう。

 駿佑は、その程度の指輪だと俺の本気度を疑われて、綿貫辺りがちょっかいかけてきそうだと思っていたのだが。

 そんな駿佑の不安は、もちろん、万千湖には伝わっていなかった。
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