暴走環状線
〜新宿歌舞伎町〜

実はあまり遊ばない真面目な淳一。
歌舞伎町になど、全く慣れてもいない。

「さすがに夜の歌舞伎町は、警察が来る場所じゃねぇな💦」

人は不安になると、独り言を言い出す。

「クラブ『ビューティナイト』これか!」

「いらっしゃいませ〜お疲れ様です」

いきなり美女2人のお出迎え。
焦る淳一💦

「あ、いや、まぁ…入るしかないか」

警察手帳を出せる雰囲気ではない。
さらに、会うのはヤクザの蔵島組長である。

「く、蔵島組長はいるか?」

その声に、一瞬空気が張り詰める
…かと思った。

が…
「なんだ、蔵ちゃんのお友達なのね〜」

「いや、お友達じゃないんだよ…💦」
(蔵ちゃん?なんなんだ、全く)

「こちらへどうぞ」

案内される前ままに、2階へ上がる。
フロアの両サイドには、黒服が2人。

「ほらほら、気にしないでこちらへ」

決してヤクザが怖いのではない。
店の華やかさと、ホステスが苦手なのである。

「蔵ちゃん、お友達ですよ」

「バカヤロウ、その呼び方やめろって」

奥のテーブル席に、蔵島満がいた。

「お楽しみのところ、悪ィな、俺は…」

警察手帳を出しかけた時、直ぐ右の部屋から出てきた女性とぶつかり、手帳を落とす。

「あら、ごめんなさい」

慌てて拾うその横を、見慣れたミニスカ&ハイヒールが通り過ぎた。

(まさかな…)

「蔵ちゃん、またなんかやらかしたの?」

そう言いながら、隣に座り脚を組む。

「はぁ〜⁉️」

思わず叫んだ淳一の目が点になった。

(あっ…いやまてよ、潜入捜査ってやつか?)


「警視庁刑事課の宮本だ、加藤吾郎について話を聞かせてもらおうか」

とりあえず、潜入捜査を前提とした淳一。

「まぁ、座れよ刑事さん。神さんからあんたの話も聞いてるよ」

(そう言えば、飛鳥組の傘下とか言ってたな)
昴の話を思い出した。

「加藤の奴、またなんか迷惑かけたのか?」

「えっ、あ、いやそうじゃないんだ」
どうにもこうにもやり難い。

「アイツは音は優しいんだが、喧嘩も弱いくせして、短気でいけねぇ」

「多分だが、昨夜死んだんだよ、爆発で」

「何?冗談はよせや…」

「本当だ。殺された…多分な」

「な〜んだと⁉️加藤が殺されたぁあ⁉️」

不意に胸ぐらを掴まれ、持ち上げられる淳一。

「誰だ❗️殺ったのはどこのどいつだ❗️」

(なんでこうなるかなぁ…咲さん!)

「蔵ちゃん、ちょっと落ち着いて、放しなさいよ、それじゃ喋れないじゃない」

(演技うまっ❗️)呆れる淳一。

「クッ、すまねぇ、つい」


その時。

「蔵島組長ってのは、いるか❗️」

聴き慣れた声がした。

「えっ、どうなってんの、あっ、上に」

ホステスが慌てているのが分かった。
聴き慣れたヒールの音。

「なんだ淳、いたのね」

「えぇェええ〜⁉️咲さん💦なんで❗️」

「あらら、お姉さん」

「あらら、美夜!どうしてここに?」

「私のお得意様なのよね。あっ、蔵ちゃん、これが、姉の咲警部」

「マジか〜⁉️」×2(淳一&蔵島組長)

双子の姉妹、鳳来咲と鳳来美夜。
妹の美夜は、岩崎建設の営業をしている。


なんだかんだありながら、必要な情報は得た。

「いや〜驚いたぜ、美夜。そっくりだな」

「美夜ぁ、あんたの奢りね❗️」

「冗談でしょ!咲すっごく飲むじゃない❗️」

「加藤の弔《とむら》い酒よ!俺が奢るぜ」

「さっすが組長!太っ腹ね、気に入った❗️」

「咲さんダメっすよ、警察がヤクザに…」

「ごちゃごちゃうるさい❗️飲め、淳!」

潜入捜査など、やるわけがない。
酒にヤクザも警察も関係ない。
…それが、鳳来咲なのである。

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