暴走環状線
〜東京足立区〜

咲が絶好調になった頃。
閑静な住宅街を最終のバスが走っていた。

「おやすみ〜」

運転手の声に、返事はない。

(あまり見かけない客だな…)

お客はあと女性が1人。
いつも一番後ろの席に座る。
そして、いつも次のバス停で降りる客である。


バス停が見えて来た。

(さて、今日の仕事も終わりだな)

誰もいないバス停へ、ゆっくり寄せ、ブレーキを踏み込んだ。


「ドドーン💥❗️」

突然バスの後部が爆発し、車体の後部が浮き上がる。

辺りの家の明かりが一斉に灯る。
運転席は無事である。

慌てて後ろを見た。
が…そこにあの女性はいない。

いや。
正確にはいた。
ただ…人の姿ではなくなっていたのである。




〜警察官対策本部〜

「紗夜さん、写真の2人見つけました」

「久米山勝《くめやままさる》と宮崎美穂」

そこで、刑事課の電話が2つ鳴った。

(昴外線へ)

「はい紗夜です」「はい警視庁刑事課」

「紗夜さん、咲さんの電話繋がらなくて。浜田智久のDNAが一致しました。咲さんに伝えてください」

「分かりました。連絡ありがとうございます」

(7人目…か)
鑑識班からの電話を聞きながら、昴の心に集中していた紗夜。

「女性?男性?」

「女性だそうです。バスの最後部に座っていて、爆破されました。運転手は無傷です」

「宮崎美穂…ね」

「住所とバス停の位置からみて、間違いないと思います」

「私は鑑識班と現場に行くから、昴は久米山勝を探して!」

走りながら電話を掛ける。

「紗夜です、今から鑑識班と科捜班の出動お願いします。正面玄関で!」

階段を降りながらもう一本。

「もしもし、淳❗️咲さんは?」

背後の声が聞こえた。
(ダメか…)

「紗夜、ちょっと今夜は無理だ」

「分かったわ、咲さんをお願い」

(何とかして、あと1人は守らないと!)

(彼は無事です。今は府中刑務所にいます)
紗夜の頭に、昴の《《声》》が届いた。

(刑務所?)

(詳しいことは調べて、また後で)

玄関で鑑識班・科捜班と合流した。

「足立区のこの住所へ!」

携帯に表示させて、運転手に渡す。

「バスが爆破されて、女性が1人犠牲に!」


警察の捜査も虚しく、事件は犯人の計画通りに運んでいた…かのように思われた。
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